こんにちは、カイです。
僕のやっているパワーリフティングという競技は階級制のスポーツなので、少しでも有利な階級で戦うために、試合前に減量を行って普段の体重よりひとつ下の階級で出場する選手が多いです。
誰もが計画通りにすんなり体重を落とせればよいのですが、実際には試合当日の検量までに体重を落とし切れず、体重オーバーで失格になってしまう選手や、過度の水抜きによってコンディションを落としてしまう選手が結構います。
全ての選手がそうでないとは思いますが、「とにかく直前に水抜いてサウナに入ったらガッツリ体重落ちるんだろ?」程度の認識で、そもそも試合直前の減量についてよく分かっていない方も多いのではないかと思います。
そこで、今回の記事では、階級制スポーツの減量に関する基本的な知識を紹介し、まずは全体像を掴んでもらうことを目的にしました。
目次
短期間で体重を落とすには、カロリー制限による除脂肪は適さない
まず皆さんに知っておいてもらいたいことは、検量スポーツの試合直前などの短期間の減量においてやるべきことは、カロリー制限による除脂肪ではないということです。

残念ながら、体脂肪を体重が変化するほど落とすには、最低でも数週間はかかります。
試合まで3~4週間あるのであれば1~2kgの除脂肪は可能かも知れませんが、残り1週間を切ってしまったら除脂肪による体重減少はきっぱり諦めましょう。
ではどうするべきかというと、試合まで1週間を切ったら、摂取カロリーは維持しながら体重だけ落とすのです。
「え?そんなことできるの?!」と思われるかも知れませんが大丈夫です。できます。
ただし、パフォーマンスを落とさないためには、次に紹介するようなテクニックを上手く使いこなす必要があります。
短期間の減量で有効な3つのテクニック
短期間での減量に有効な3つのテクニックを紹介します。
これらのテクニックを組み合わせれば、パフォーマンスをあまり落とさずに体重を5%以上減らすことが可能です。(もちろん個人差はあります)
① 水抜き(水分・塩分の調整)
落とせる体重:体重の5%程度まで
試合直前に使える減量手法で、最もメジャーなのが『水抜き』でしょう。
人体の約60%は水なので、体重を減らすには身体から水を抜いてしまうのが手っ取り早いです。
ただし、試合数日前から水分をカットしたり、闇雲に長時間サウナに入っても、うまく水が抜けないばかりか脱水症状を引き起こしてしまう可能性が高いです。

通常5%を超えて水分が失われる頃には、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れます。
脱水症状になると、運動パフォーマンスが低下するのはもちろんのこと、最悪の場合死に至る危険もありますので、過度な水抜きはやめましょう。

② 消化管の内容物を減らす
落とせる体重:体重の1~2%程度(普段の食事量による)
短期間で体重を減らすには、消化管の内容物を減らすことも有効です。
口から摂取された食べ物が便として排泄されるまでに約24時間から48時間かかるので、普段は結構な重さの内容物が消化管の中に詰まっています。

流動食やプロテインシェイク、マルチビタミン&ミネラルを利用して食事の密度を増やすことで、余分な消化管の内容物を減らすことが出来ます。
摂取カロリーを維持した上で必要な栄養素が取れていれば、パフォーマンスへの悪影響はほぼないと思われます。
試合の3日前ぐらいから晩御飯を流動食に置き換えるところから始めて、体重の減りをみながら、リミットまで余裕がなければ試合前日は全ての食事を流動食に置き換えてしまっても良いでしょう。
実際、僕がこのようなやり方で丸一日全て流動食にしたときは、1kgほど落ちました。
③ 糖質の摂取量を減らす
落とせる体重:体重の1~3%程度
あまりオススメはしませんが、糖質の摂取量を減らすことによっても、体重を減らすことが出来ます。

糖質の摂取量を減らすと、肝臓や筋肉に貯蔵されていたグリコーゲン(体内での糖質の貯蔵形態)の貯蔵量が減少します。
その際にグリコーゲンに結合していた水分も一緒に失われるため、結果的に「グリコーゲン+水」のだけ体重が減ります。(細胞内ではグリコーゲン1gにつき3gの水が結合している)
一般成人男性であれば、肝グリコーゲンとして約100g、筋グリコーゲンとして約300gで合計400gくらいのグリコーゲンが蓄えられているので、グリコーゲンを完全に枯渇させた場合、グリコーゲン+結合水で合計400+1200=1600gぐらいの重さが失われることになります。
筋グリコーゲンの貯蔵量は筋肉量に依存するので、筋量の多い方であれば体重の減りはもっと大きくなります。
僕の場合ですと、フィジークの大会直前にカーボディプリート(糖質の摂取をほぼゼロにする)を行った際は、3日間のディプリートで体重が1.5kg減少しました。

「体重を減らす」という点に限って言えば、糖質の摂取量を減らすのはかなり有効な手法であると言えます。
糖質の摂取量を減らし過ぎると練習中のスタミナや集中力が低下したり、試合当日のリカバリーが間に合わず、試合でいつも通りの力を発揮できなくなってしまう恐れがあります。
よほど体重がオーバーしていない限りは、極力糖質は普段通りの量を摂取するようにし、カットするにしても「試合の2~3日前から普段の摂取量の50%ぐらいに減らす」程度に留めることをオススメします。
検量が終わったら直ちにリカバリーを開始する

水抜きや糖質制限を行って体重を落とした場合、水および電解質の不足、グリコーゲンの枯渇などにより、身体のコンディションは普段より相当悪い状態になっています。
検量が終わったらすぐに「リカバリー」を開始し、不足している成分を補いましょう。
特に優先して補うべき成分は、
- 水
- 塩分(ナトリウム)
- 糖質
です。
このとき水分補給には必ず、経口補水液やポカリスエットのような、塩分を含んだ飲料を用いて下さい。
塩分を含んでいない飲料を飲むと余計に体液濃度が薄まってしまい、飲んだ水を尿として排出しやすくなってしまいます。
水1Lにつき、食塩3g、糖質20~40g、レモンなどを適宜加えることで、簡易型ですが経口補水液を自作することもできます。
自作する場合は、ヴィターゴやCCDなどの吸収の速い糖質を用いるのがオススメです。
試合までの間に固形物を摂取したい場合は、パスタやおにぎり、バナナといった比較的吸収の速い糖質を、試合の1時間前までに摂取しましょう。(食べ過ぎには注意)
また、消化に時間のかかる揚げ物や油物もNGです。消化中は胃に血液が集まり筋肉に血液が送られにくくなるため、パフォーマンスの低下につながります。
「直前の体重の下げ幅が少ないほど、試合当日のパフォーマンスは下がりにくい」ということをお忘れなく
最後に、皆さんに覚えておいてほしい大前提があります。
それは、直前の体重の下げ幅が少ないほど、試合当日のパフォーマンスは下がりにくいということです。
記事内で紹介したようなテクニックは短期間で体重を落とすには非常に有効ですが、「短期間で体重を落とす」という行為そのものがパフォーマンスを下げるリスクを孕んでいるのです。
試合で普段通りのパフォーマンスを発揮したいのであれば、普段から節制してリミット+α程度の体重を維持しておくか、もしくは試合の1週間前までにはしっかり体重を落としておくのが一番です。
リスクをどの程度許容するかは個人の自由ですが、短期間で大きく体重を落とすのであれば、それなりにパフォーマンスが下がってしまうことは覚悟しておきましょう。
水抜きの詳しい解説や、具体的な減量スケジュールについては、また別の記事で書きます
今回の記事では、試合直前の体重調整に関する基礎知識について一通り解説しました。
水抜きの詳しい解説や、具体的な減量スケジュールについては、また別の記事で書く予定です。
それではまた!
