こんにちは、パワーリフターのカイです。
「スモウデッドリフトをやると股関節や内転筋が痛む」という悩みを本当によく聞きます。
これについては僕自身も経験しましたし、身近な知り合いやSNSのフォロワーさん達の中にも経験者(もしくは現在進行形で悩んでいる方)が沢山いらっしゃいます。
先日、この件についての僕なりの考えをツイートしたところ、大きな反響がありました。
スモウデッドリフトで内転筋痛める人は、動画の右側みたいに膝が内に入ってしまってるんじゃないかな。
ニーインすると骨盤前傾するから、内転筋に負担が掛かって痛むんだと思う。
試しに動画の左側みたいに、骨盤が前傾しないようにニュートラルに保ったまま、しっかり股を割ってみて欲しい。 pic.twitter.com/Ty3bikyaAT— カイ (@Kai_MuscleBlog) May 31, 2019
僕は医者ではありませんし、痛みの箇所を特定したり診断したりということはできませんが、一選手としてスモウデッドリフトで痛みが出てしまう原因や解決策について考えていることはいくつかあります。
今回はその辺りの僕の考えについてお話させてもらおうと思います。
目次
特定の関節や筋肉が痛むときは、何らかの理由でその部位に過度なストレスが掛かっている

そもそも特定の関節や筋肉が痛むときというのは、何らかの理由でその部位に過度なストレスが掛かっている可能性が高いです。
ストレスの主な原因としては、
- 関節や筋肉に加わる過度なストレッチや捻じれ等
- フォームが悪いことによる負担の一極集中
- オーバーユース(使いすぎ)
などが考えられます。
例えば、ベンチプレスで下ろす位置が悪いと大胸筋や肩の前部に過度なストレッチが掛かってしまい、痛みの原因になります。
また、特定の関節や筋肉だけに負担が集中するフォームだと、長く続けているうちに痛みが出てしまうことがあります。
その他によくあるのは、関節や筋肉のオーバーユース(使いすぎ)です。
いくら全身に負荷を分散させた良いフォームで練習していても、回復が追い付かなければ身体は壊れます。
特にフォームを変更した直後は怪我をしやすいタイミングで、身体が新しいフォームに適応する前に練習量を増やし過ぎてしまうのは禁物です。
「内転筋」は股関節の内転に働く筋肉の総称
スモウデッドリフトで痛めがちな「内転筋」ですが、これは
- 大内転筋
- 小内転筋
- 長内転筋
- 短内転筋
- 薄筋
- 恥骨筋
といった股関節の内転(股を閉じる動き)に働く筋肉の総称です。

「スモウデッドリフトで股関節を痛めた」という場合には、これら内転筋群のどれかを痛めていることが多いです。
ただし、場合によっては筋肉ではなく股関節自体の不具合(インピンジメント等)によって痛みが生じていることもあります。
どこを痛めているのかを突き止めたい場合は、病院へ行って診察を受けて下さい。
僕が伝えられるのは、あくまでもフォームや練習のやり方、日々のコンディショニングに関することだけです。
この記事では、
- なぜスモウデッドリフトで股関節周辺に痛みが出てしまうのか
- 痛みが出ないようにするにはどうすれば良いのか
といった悩みに関して、僕なりの考えを書いていきます。
スモウデッドリフトで股関節・内転筋が痛む理由
それでは本題に入っていきましょう。
スモウデッドリフトで股関節や内転筋が痛む理由として、主に次の4パターンがあると考えています。
- そもそも骨格的にワイドスタンスでの動作が向いていない
- 柔軟性不足から内転筋にストレッチが掛かり過ぎている
- フォームが悪くて股関節内側や内転筋に負担が一極集中している
- 練習のし過ぎで回復が追い付いていない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原因① そもそも骨格的にワイドスタンスでの動作が向いていない
解決策:スタンスを狭くする、スモウデッドリフトを諦める
身も蓋もない話ですが、骨格的にワイドスタンスでの動作が向いていない人は存在します。
ワイドスタンスのスクワットやスモウデッドリフトで、内転筋などの筋肉ではなく、股関節自体に痛みが出る場合はその可能性があると考えた方が良いでしょう。
この場合は、スタンスを狭くして対処するか、それでもダメならスモウデッドリフトは諦めるしかありません。
ただ、これは大腿骨の骨頭部分の形状や、股関節へのハマりの向き・深さといった問題が複雑に関係しているので、自分の骨格的な向き不向きを判断するのは正直難しいです。
ただ、その辺りを判断するためのヒントになる情報に関しては、トレーニング強化書さんのブログで沢山解説されているので、気になる人は是非読んでみて下さい。
トレーニング教科書さんの参考記事一覧
記事自体はスクワットに関連したものですが、股関節の構造とフォームの関係性について詳しく書かれていてめちゃく茶参考になりました。
スモウデッドリフトにも適用できる内容だと思います。
原因② 柔軟性不足から内転筋にストレッチが掛かり過ぎている
解決策:内転筋の柔軟性を向上させる、足幅を狭くする
内転筋の柔軟性不足のために、内転筋にストレッチが掛かり過ぎてしまっているパターンです。
スモウデッドリフトではファーストプルで股関節を大きく外転および外旋させて、骨盤を前方に入れ込んだポジションを取る必要がありますが、内転筋が固い人はこのポジションを取るだけでも内転筋に強いストレッチがかかります。

バーベルを挙上するには内転筋に強いストレッチが掛かったまま力を発揮せねばならず、そのストレスが痛みの原因となります。
これはストレッチ等を行って内転筋の柔軟性を向上させるか、現状の柔軟性でも痛みが出ないように足幅を狭くするしかないでしょう。
内転筋の柔軟性を向上させるストレッチについては後述します。
原因③ フォームが悪くて股関節内側や内転筋に負担が一極集中している
解決策:フォームの修正、股関節外転筋群の強化
フォームが悪くて股関節や内転筋に負担が一極集中しているパターンも多いです。(僕が内転筋を痛めたのもこのパターンでした)
特にワイドスタンスで股関節の外転と外旋が上手くできていない場合は、大腿骨をつっかえ棒のようにして重量を支えるフォームになります。

これは股関節の内側や内転筋に大きな負担がかかるフォームです。
逆に、股関節の外転と外旋が上手くできていると、負担はお尻の方へ移行するので、股関節の内側や内転筋の負担は軽減します。
つまり、この場合の解決策としては、まず股関節の外転と外旋をしっかり行うことです。
お尻の外側の筋肉を使うことを意識したり、「膝を外に割る」「足で地面を引き裂く」というような意識を持つことが有効です。

意識しても上手くいかない場合は、股関節外転筋群および外旋筋群(お尻の筋肉)自体が上手く働いていないか、相対的にその辺りの筋力が弱すぎる可能性が考えられます。
ウォーミングアップでクラムシェルやバンドスクワットなどでアクティベートしてやったり、補強種目を入れて強化してやる必要があるでしょう。

また、そもそも基本的なフォームが出来ていない可能性もありますので、その場合はコチラの記事を参考にして下さい。

フィニッシュで内転筋が痛む場合は?
主にファーストプルからセカンドプルにおいて内転筋が痛む場合について話してきましたが、フィニッシュポジションで内転筋が痛む場合もあります。
この場合は、つま先の向きを大きく外に向けて、股関節を強く外旋させながら立ち上がるようにすると良いかも知れません。

つま先が前を向いていると、フィニッシュポジションで内転筋(特に薄筋)にストレッチがかかりやすくなります。
下の写真のような内転筋のストレッチ種目に近い体勢になると考えると分かりやすいと思います。(このストレッチで痛みが出るなら薄筋を痛めている可能性が高いです)

もちろんつま先を外に向けるとバランスを崩しやすくなりますし、フォーム全体との兼ね合いでもありますが、フィニッシュで内転筋に痛みが出て困っている人は一度「つま先の向きを大きく外に向けて、股関節を強く外旋させながら立ち上がる」というパターンを試してみて下さい。
原因④ 練習のし過ぎで回復が追い付いていない
解決策:練習を休む、適切なボリューム・強度で練習する
早く強くなりたい一心で練習し過ぎて、回復が追い付かないことによっても怪我はおきます。
特にコンベンショナルデッドリフトからスモウデッドリフトに移行したての方は要注意です。

コンベンショナルデッドリフトではあまり使われなかった内転筋やお尻の筋肉が相対的に弱くて、スモウデッドリフトの練習に身体が耐えられない可能性があります。
頻度・重量・ボリューム共に、身体が慣れるまでは低めに設定して、徐々に上げていくようにするのが賢明です。
既に痛みが出てしまっている場合は、練習を休むのが一番の解決策でしょう。
痛みが治まってから正しいフォームで軽い重量から積みなおしていくべきです。
内転筋のストレッチ
内転筋が固すぎる方向けに、内転筋のストレッチを3つ紹介しておきます。
静的ストレッチに関しては20秒、フォームローラーに関しては30~45秒ぐらいを目安に2~3セット程度行うと良いと思います。
四股ストレッチ
相撲の四股の体勢を取ることで内転筋をストレッチします。

楽に四股の体勢が取れるようなら、左右に肩を入れてみましょう。

この動作が楽に行えるようなら、スモウデッドリフトのファーストプルにおいては、内転筋の柔軟性は問題なしです。
立位での内転筋ストレッチ

フィニッシュポジションで内転筋が痛む人に有効なストレッチです。
つま先を前に向けたまま、足を左右に軽く広げて立ちます。
そのまま膝を伸ばした状態で腰を横に倒していくと、内転筋がストレッチされるのを感じるはずです。
足裏合わせストレッチ
足裏を合わせた状態で地面に座り、足を股関節の方へ引き寄せます。

腕で脚を軽く地面の方に押して、内転筋にストレッチをかけていきます。
背中が丸まらないようにしましょう。
フォームローラーを利用したストレッチ
フォームローラーの上に片脚を乗せて、内転筋に圧力がかかるように体重を掛けていきます。

そのまま左右にコロコロします。
振動ローラーを使用する場合は、痛みや固さを感じる部分に当て続けましょう。
股関節外転筋・外旋筋のアクティベーションドリル
股関節外転筋・外旋筋を上手く使うためのアクティベーションドリルも紹介しておきます。
スモウデッドリフトやスクワットを行う前に導入すると、お尻の筋肉が上手く使えて上手く股関節を割って動作出来るようになるはずです。
ちなみに、内容のほとんどはパワーリフターでパーソナルトレーナーの栗原さん(@kuririn_h)が以前SBDコラムで書かれていた記事を参考にしているので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。
クラムシェル(大殿筋)
体幹部を固定した状態で股関節の外転動作を行う種目です。
バンドを膝上に巻いて、膝を90度より少し曲げた状態で横向きに寝ます。

体幹部や骨盤は真っすぐに保ったまま、お尻の力で脚を開きます。

ゆっくり開いたり閉じたりを15~20回、1~3セット行います。
しっかり股関節を開かずに行うと、意外と小さい動作で大殿筋の収縮感が得られます。
骨盤ごと捻って脚を開いてもしまうと殿筋に収縮は入らないので、大きく動かすのではなく、しっかりお尻の力で脚を開く意識でやりましょう。
ヒップアダクション(中殿筋)
中殿筋を刺激する種目です。
横を向いて寝た後、上体はうつ伏せ、膝を伸ばして脚は後ろへ出来るだけ引いた姿勢を作ります。

これも骨盤や上体が開かないように気を付けます。
この体勢で、中殿筋(お尻の横の筋肉)を使って脚を上に持ち上げます。

これも10回~15回、1~3セットを目安に行います。
梨状筋エクササイズ(梨状筋)
股関節の外旋に働く梨状筋のエクササイズです。
バンドやチューブをベンチ台の足やラック等に固定して、足首に引っ掛けます。

そして足首が外側にある状態から、バンドに抵抗しながらできるだけ内側に引っ張ります。

15回~20回、1~3セットを目安に行いましょう。
これも上記2種目同様、骨盤を開いたりせず、しっかり股関節の外旋動作(大腿部を外側に捻る動き)でチューブを引っ張るように意識します。
バンドスクワット(大殿筋・中殿筋)
「足で地面を踏みながらお尻の筋肉を使う」という感覚を養うのにバンドスクワットは最適です。
バンドの巻き方やフォームは色々ありますが、今回は僕が普段やっているやり方を紹介します。
まず、つま先を前に向けた状態で足を肩幅程度に開き、膝と足首の辺りにバンドを通します。

そしてバンドに抵抗しながら膝を外に開くように力を入れながらしゃがんでいきます。
深さは無理のないところまでで構いません。
15回~20回程度、1~3セットを目安に行います。
まとめ
今回は、僕の考える「スモウデッドリフトで股関節や内転筋が痛む理由とその対処法」について解説しました。
怪我をした際はまずは病院へ行って診断してもらうのが第一ですが、基本的には医師からはしばらく安静にするように指示されるだけです。
しばらく休んで痛みが引いたからと言って練習を再開しても、同じ練習を繰り返せば必ずまた同じ部分を痛めてしまいます。
したがって、必ずどこかを改善する必要があるのです。
もちろんこの記事に書いてあることが全てではありませんが、皆さんが痛みが出る原因や解決策について考えるヒントぐらいにはなると思い、今回筆を取らせて頂きました。
この記事が皆さんが怪我無くスモウデッドを行うためのヒントになれば幸いです。
