こんにちは、カイです。
僕は昨年からパワーリフティングという競技に取り組んでおり、BIG3のフォームについて日々研究と試行錯誤を重ねています。
パワーリフティング・ウェイトリフティングでスクワットが強い選手を見ていると、フォームに関しては本当に人それぞれであることに気付きます。
しかし、「人それぞれ」で終わらせてしまっては結局自分がどういうフォームを取るべきか分かりません。
そこで今回は「骨格の違い」という観点から「最適なスクワットのフォーム」について考察してみたいと思います。
目次
前提として「シャフトがミッドフット(土踏まず)の真上にくるフォーム」が理想だと考えています
考察に入る前に、そもそも「適切なフォーム」とはどういうものかについて、僕の考えを話しておこうと思います。
僕は前提として、下の図のような「シャフトがミッドフット(土踏まず)の真上を上下するフォーム」がスクワットの理想的なフォームだと考えています。

それが一番シャフトに力が効率的に伝わるはずだからです。
実際、スクワットをしているときにシャフトが前や後ろに流れたりすると、バランスを取るために余計な力を使ってしまっているのを感じると思います。
したがって、意識としては「しゃがんだ結果、シャフトが上下に動く」というよりは、「シャフトが土踏まずの真上を上下するように身体を上手く折りたたむ」という意識が正しいと思っています。
そういうわけで、この後の話は全て「シャフトがミッドフット(土踏まず)の真上にくるフォーム」が適切という前提で進めていくのでご了承下さい。
スクワットのフォームと骨格の関係を考える上で参考になった動画
スクワットのフォームと骨格の関係を考える上で、KATAGIさんという方がYouTubeに上げている動画が非常に参考になったので張っておきます。
元々英語の動画をKATAGIさんが日本語に訳して解説してくれています。
動画①
動画①の概要
- 比嘉選手(ノーギア74kg級スクワット世界記録保持者)の独特なフォームは「大腿骨が長く、胴体が短い」という身体的な特性が関わっている(00:00~05:29)
- 骨格によってしゃがみ方が変わることを模型を用いて解説(05:29~)
動画②
動画②の概要
- 大腿骨が短い人は容易に深くしゃがむことができる(00:33~)
- 大腿骨が長く、胴体が短い人は深くしゃがむことが難しいので、足幅を広げたり踵の高い靴を履くことが有効(08:16~)
模型や人の身体を使って解説してくれるので、非常に分かりやすいです。
上の動画でイメージを掴んでもらったところで、いよいよ考察に入りたいと思います。
スクワットのフォームに影響を与える骨格の2大要素

スクワットのフォームに影響を与える骨格の要素は、主に次の2つであると言えます。
- 大腿骨の長さ(脛骨に対する相対的な長さ)
- 胴体の長さ
この2つのバランスによって、しゃがみやすさ、前傾角度、適切な担ぎ位置等が大きく変わってきます。(骨格の影響だけを考えた場合ですが)
以下では、この2つの要素がフォームにどのような影響を与えるのかについて具体的に説明していきます。
この先登場する図は僕の自作の図ですが、担ぎ位置や前傾角度などはあえてバラバラに描いています。
「実際この体型だとこんな感じのフォームになるよな」という僕の感覚を図にしたものだからです。
もちろん担ぎ位置や前傾角度を揃えて、数学的な場合分けをして議論することもできますが、それだと実際の動きにそぐわなくなってしまうと思うので、あえてこのような感覚重視の図にしました。
したがって、図のフォームに違和感を感じる方もいるかも知れませんが、単に僕のバランス感覚が悪いと言うことですので、その点はご容赦下さい。
①大腿骨の長さ(脛骨に対する相対的な長さ)
しゃがみやすさに一番大きく関わってくるのが、大腿骨の長さです。
これは大腿骨自体の絶対的な長さではなく、脛骨との相対的な長さ関係が重要です。
基本的には大腿骨が短い方がしゃがみやすく、前傾角度が浅くなります。
下の図は、胴体と脚部全体の長さの比率は変えずに、脛骨と大腿骨の長さの比率をだけ変えて描いた図です。(前傾角度は僕の感覚で変えていますが)

元々スクワットが強い人や、少ししゃがんだだけで深いしゃがみに見える人というのは、上図(a)のように大腿骨が短い(相対的に脛骨が長い)体型の場合が多いです。
逆に上図(b)のように大腿骨が長い(相対的に脛骨が短い)場合は、お尻を突き出して大きく前傾しないと深くしゃがめません。
これはスクワットで深くしゃがんで高重量を上げるには不利となります。
ただし、足幅を広げたり、踵の高いを履くことで体型による不利をある程度カバーすることは可能です。(これについては後述します)
②胴体の長さ
脚部に対する胴体の相対的な長さもフォームに大きな影響を与えます。
基本的には、胴体が短いと前傾が深くなり、胴体が長いと前傾は浅くなる傾向にあると思います。

例えばかなり極端な例ですが、大腿骨が長くて胴体が短い場合は必然的に上図 (a) のようなしゃがみになります。
大腿骨が長いと股関節を大きく後ろに引くことになるため、前傾がキツくなるのは先ほど説明した通りです。
これに加えて胴体が短い場合、ミッドフットの真上にシャフトを持ってくるのにより深い前傾が必要となり、股関節~背中に働くモーメントが非常に大きくなります。
したがって、この体型の選手は股関節~背中に働くモーメントが小さくなるように低めの位置のローバーで担ぐことが多いです。(先ほどの動画①に登場する比嘉選手、レイン・ノートン選手等)

逆に、胴体が長い場合は、上図(b)のように前傾角度が浅くても楽にミッドフットの上にシャフトを持ってこれます。
この体型だと普通~高めのローバーあたりが安定しやすいと思います。

最も前傾が浅くなる体型としては、上図cのように大腿骨に対して胴体が長い体型が上げられます。
この体型の人は、上体を立てたハイバー気味の担ぎでも安定しやすいと考えられます。(後ほど紹介する武田選手、ジェザ・ウェパ選手等)
これは大腿部に対して胴体が長いと、浅い前傾角度でもミッドフットの真上にシャフトの担ぎ位置がくるためです。
ただ、胴体が長い分には前傾角度を深くすれば低い担ぎでも無理なくシャフトをミッドフットの上に保つことができるので、胴長で大腿骨が短い体型の場合はローバー・ハイバーどちらも良い感覚で動作できるかもしれません。
スクワットに不利な体型の場合の対処法
大腿骨が相対的に長く、先天的にスクワットに不利な体型だったとしても、落ち込むのはまだ早いです。
大腿骨の長さをカバーする方法を3つ紹介します。
①スタンス(足幅)を広げる
スタンスを広げることで、大腿骨の長さをカバーすることが可能です。

スタンスを広げると前後方向の長さ成分が短くなるので、実質的に大腿骨が短くなったのと同じ効果が得られます。
ただし、どのくらいのスタンスが適切かどうかは、胴体の長さや股関節の柔軟性、各部位の筋力バランスなども関わってくるので、必ずしも広いスタンスが良いというわけではありません。
②足首の背屈可動域を向上させる

日々のストレッチやウォーミングアップで足首の背屈可動域を向上させると、膝が前に出やすくなって深くしゃがみやすくなります。
いきなり柔らかくはならないので、コツコツ地道に取り組むしかありません。
僕自身も取り組んでいる最中です。
③踵の高い靴(ウェイトリフティングシューズ)を履く

ウェイトリフティングシューズのような踵の高い靴を履くことによっても、大腿骨の長さの不利をカバーすることができます。
これは踵の高い靴を履くことで、脛骨が長く(=相対的に大腿骨が短く)なり、さらに足首の可動域が向上したのと同様の効果を得られるからです。
そもそも体型的に大腿骨が長くスクワットに不利な骨格の場合は、初めからウェイトリフティングシューズを使用するのが良いと思います。(もちろん足首の可動域の向上は地道に行う必要がありますが)
スクワットが強い選手の体型とフォーム分析
ここまでの考察を踏まえ、スクワットが強い選手の体型とフォームを分析してみました。
これは僕が勝手に予想しただけであり、実際合ってるかどうかは全く分かりませんので参考までに。
①大腿骨が長く、胴体が短い(比嘉選手、レイン・ノートン選手)
記事の冒頭付近で取り上げた動画①でも紹介されてましたが、この2人は典型的な「大腿骨が長くて胴体が短い」体型の人のスクワットだと思います。
担ぎは低い位置で、深く前傾してしゃがんでいますね。
この体型だと、このフォーム以外で深さを出すのはかなり難しいのでしょう。
②大腿骨が短く、胴体も短い(チャールズ・オクポコ選手、ラッセル・オルヒ選手)
これは黒人選手に多い体型だと思います。
手足が長く、比較的大腿骨は短いように見えます。
オルヒ選手が割と高めの担ぎで、ミディアムスタンス×フラットなシューズで安定してしゃがめるのは、大腿骨の短さが関係していると思います。
③大腿骨の長さは普通、胴体が長い(ブレッド・ギブス選手)
ギブス選手は大腿骨の長さは普通かやや短めで、胴体が比較的長いように見えます。
肩幅程度の狭いスタンスで、膝を左右に割らずにお尻を突きすようなしゃがみ方が特徴的です。
このような前後方向のモーメントが大きくなるしゃがみ方でも、胴長体型なので過剰な前傾は起こっていません。
むしろギブス選手の場合、強い背中の力を上手く使えるように、お尻を突き出すようなしゃがみで適度な前傾を作りにいっているのだと思います。(ギブス選手はナローデッドで300kg以上を引く背中が相当強い選手です)
④大腿骨が短く、胴体が長い(武田選手、ジェザ・ウェパ選手)
武田選手はハイバーの担ぎが特徴的ですね。
比較的大腿骨が短く胴体が長い体型であることも、このフォームを採用している理由の一つかと思います。
ジェザ・ウェパ選手もハイバーで担ぎます。
この選手は見ての通り手足が短く、胴体が非常に長い体型です。
デッドリフトに至っては、腕が短すぎて本当にフィニッシュが辛そうです。(よくグリップアウトしてます(笑))
しかし、胴の長さと大腿部の短さが相まって超スクワット向きの体型であり、スクワットはめちゃくちゃ強いです。
これぞザ・スクワッター体型と呼べるのではないでしょうか。
ちなみに自分は恐らく「大腿骨が長く、胴体も長い」体型・・・
ちなみにですが、自分は恐らく「大腿骨が長く、胴体も長い」体型です。(記録は忘れましたが、かなり座高が高いです・・・orz)

これまでフラットなシューズでスクワットをしてきましたが、自分の体型には踵の高い靴の方が合ってるのではないかと考え、最近ウェイトリフティングシューズを試しているところです。
アディダスのパワーリフト3(ヒール高15mm)というウェイトリフティングシューズとしては踵が低めのものを使用していますが、それでもしゃがみの途中で力の抜ける感覚がなくなり、ワンモーションで安定して動作できるようになったので、やはり自分の体型にはウェイトリフティングシューズが合っているかなと思います。
数日前に、さらに踵の高いナイキのロマレオス3(ヒール高20mm)を注文したので、それでしゃがみやすさがどう変わってくるか検証してみます。
リフティングシューズで大腿骨の長さをカバーした上で、担ぎ位置はやや高めにすることにしました
「今の時点の考え」ではありますが、今後はリフティングシューズを履いて大腿骨の長さによる不利をカバーした上で、担ぎ位置に関してはやや高めのローバーでいきたいと考えています。(これまではフラットシューズ×普通のローバー組み合わせだった)
その位置が一番シャフトが安定しますし、胴体の長い自分はそこまで低い位置で担ぐ必要もない、という判断からです。
しかも最近、肩の可動域の限界を超えた超ローバーの担ぎを練習しまくって怪我をしてしまったので、そもそも低い位置にはしばらく担げません・・・
今は腕~手にかけて痺れの症状が出ているのでローバーの練習は中断していますが、直ったら徐々にウェイトリフティングシューズ×高めのローバーでの練習を進めていきたいと思っています。
まとめ:自分の骨格をしっかり把握して、適切なフォームを考えるべし
今回は個人の骨格と適切なスクワットのフォームについて、考えたことを書いてみました。(74kgでスクワット自己ベスト190kgの弱小リフターがこんな記事を書くのは少し気が引けましたが・・・(笑))
とにかく、まずは自分の骨格をしっかり把握して、適切なフォームをイメージすることが大切だと思います。
もちろん柔軟性や筋力バランス、個人の感覚によってもフォームは変わってくるものですが、骨格というのは間違いなくフォームに影響を与える重要な要素です。
まだ自分自身もフォームが固まっているわけではありませんが、この記事で書いたようなことを考えてるうちに、かなり方向性は定まってきました。
ただ、ここまで考えがまとまる前の色々と試行錯誤している段階で僕は怪我をしてしまったので、これを読んでる皆さんは怪我には十分注意して下さい。
新しいフォームを試すと記録が伸びる可能性もありますが、当然怪我をしてしまう可能性もあるので。
この記事が、怪我をしないで適切なフォームに近づくためのヒントになれば幸いです。
それではまた!